福井県は多くの原子力発電施設が集積しており、地域住民は放射線に対して強い関心を持っているところから、放射線の医学利用の一環として、高エネルギー医学研究センターが平成6年度に福井医科大学に設置されました。本研究センターは、放射線など高エネルギー電磁波の医学利用に関する研究を推進するもので、サイクロトロン及びポジトロン断層撮影(PET)装置を用いて生体の機能や病態を画像化し、疾患の診断と予防に関する基礎的、臨床的研究の発展を目指しています。
従来の臨床医学においては、エックス線写真が唯一の医用画像でしたが、1972年のエックス線コンピュータ断層投影(CT)の発明が契機となって、さまざまな医用画像が登場してきました。その中で、エックス線CT、超音波画像、磁気共鳴画像(MRI)は臓器の形態異常の診断に優れています。これに対して、放射性同位元素(ラジオアイソトープ)を利用する核医学画像は、臓器の機能異常の描出に適しており、形態異常の出現する前の段階で疾患を見つけることができる特徴があります。PETは、きわめて短い寿命のラジオアイソトープを利用する核医学画像の一つですが、からだの中の代謝機能の測定ができる利点があり、脳、心臓、悪性腫瘍など多くの疾患の病態の解明に貢献することが期待されています。また、最近ではMRIによる機能測定技術の開発も進められ、今後これらの非侵襲的機能画像診断法の一層の進展が期待されています。
一方、近年、生化学や分子生物学のめざましい発展により、老化、変性、発癌など各種の疾患において遺伝子レベルからの異常が見つけられ、多数の分子がその異常に関与することが報告されています。サイクロトロンで製造されるポジトロン核種は、これらの分子の標識に適しており、機能異常の分子レベルにおける画像化をめざしてその基礎的研究を行っています。
高エネルギー医学研究センター長
清野 泰